業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。


つえ屋店内
絞られた商品でありながら、その商品の量が多いことは重要です。

『つえ屋』は、世界中から杖とステッキを取り寄せ、陳列数を増やしたことでメディアの目にとまりました。杖のグリップだけでも300種類以上もの数をそろえています。

全国の一流百貨店から催事販売の依頼が寄せられるようにもなりました。年間150回以上も催事販売をしています。
5年で直営5店舗になりました。すべて相乗効果の表れです。

絞るということは、じつはたいへんなことです。たいへんなことだからこそ、やり遂げている会社は1位になれるのです。

〈ダイジェスト〉

つえ屋店舗
  ステッキ、杖の専門店。名前は『つえ屋』。平成18年(2006年)にオープンしてからお客が増え続けています。
 商品は杖。杖に絞った商品戦略の事例。そこまでは容易に想像できますが、商品の幅を狭めるだけなら誰でもできます。
 坂野寛(ゆたか)社長は、日本で誰よりも、どこよりも杖を多く扱うことにしました。その数、8万本。
 世界40ヵ国から杖を集め、京都の直営店に飾り、関西の一流百貨店に並べ、販売代理店でも置いてもらい、全国のデパート催事場を訪ねるお客の手に取ってもらっています。
 杖のみを扱う店は、ありそうで存在しませんでした。杖だけでは商売にならない。そう思われていたとしか思えません。
 坂野社長も、最初は苦労しました。「杖専門店です」と、杖を並べるだけでは売れないことはわかっています。
 そうかといって、それまで親から継いだ会社をつぶしてしまった坂野社長には、広告宣伝に使うお金がありません。考えられるかぎりのところにプレスリリースをして、口コミで広がることを期待しました。
 最初の頃は月に50本の杖が売れて50万円ほどの売上を上げるのが精一杯。しかしプレスリリース活動のおかげで、全国発売の雑誌に掲載が決定。それを機に、つえ屋の知名度は上がりました。
 最初の月は50本だったものが、いまでは月2000本を販売する、つえ屋。生じた利益をどの部分にどう使うかでお客の増え方が決まりますが、坂野社長は当初、利益すべてを商品仕入に費やしてきました。
 つえ屋のホームページをごらんください。杖、杖、杖。これはつえ屋にかなわない。誰が見てもそう思うことでしょう。
 つえ屋の強さを整理すると、次のようになります。

●商品の幅は広げない。杖に絞り、その代わり世界中から杖を集め、用途やデザインにおいてあらゆる要望に応えられる品揃えをはかる。
●杖の品揃えならつえ屋。つえ屋にない杖はない。圧倒的な商品数により、お客から見たときの専門性を打ち出し、他社の参入障壁を築く。
●在庫を切らしたくはないが、一店舗で膨大な商品の在庫管理はできない。その解決策として、短時間で行き来できる範囲に販売代理店網をつくる。
●本店で不足した商品は代理店から取り寄せ、お客に不便をかけない。機会損失を発生させない。
●ホームセンターなどと区別してもらうために、価格が高めのものを中心商品とする。値引きはせず、価格の安さにとらわれない客層を定める。

つえの移動販売車
 坂野社長による経営は、敵をつくらない経営、競争相手の参入を許さない経営です。価格競争をする必要がないこともあって、利益性の高い経営を実現できます。
 つえ屋の2013年売上は約2億円を見込んでいます。経常利益率は約10パーセント。高い粗利益率を維持できることが根本的な理由ですが、粗利益率が高いのは競争相手がいないから。
 商品は杖。誰でも開業できそうです。高齢化率が高くなる今後、場所を問わず売れそうです。にもかかわらず、競争相手がいなくて、お客が増えて、利益性もいい『つえ屋』が、お客が増える!No.51の事例です。


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