業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。

〈ダイジェスト〉

やり方を大きく変えないからお客が増える

エミリー_ハガキ
2010年1月は5293件。3年10ヵ月後の2013年11月は8156件。
ふらんす菓子屋エミリーの顧客名簿の数です。
ふらんす菓子屋エミリー、以下、「エミリー」と呼ばせていただきますが、エミリーでは顧客名簿をつくり、お客にお礼状を出したり訪問したりしています。
その取り組みが、お客の数の増大という成果につながっています。

2010年の3月に発行した「お客が増える!No.15」では、2代目、小野善秀(よしひで)さんの物語と、経営のやり方についてレポートしました。
それから4年近くのあいだ、小野さんはどんな経営をおこなってきたのか。何を続けているのか。どこを進化させたのか。新たに始めたことはあるのか。やめたことはあるのか。
あらためてうかがった話をまとめたものが、このお客が増える!No.61です。

エミリー_誕生日カード
46ヵ月前、小野さんから聞いた話をまとめたNo.15は、お客が増え始める以前の状況も書いています。
修業から戻った小野さんの目に映ったのは、ひまなエミリー、タバコを売っていたエミリー、仕入れたお菓子が売れていたエミリーです。
ふらんす焼き菓子のおいしさを知ってほしいのに、やることといえば、エミリーの一角に設けたタバココーナーの店番と、タバコの配達、そしてタバコの自動販売機への補充でした。

経営の勉強をすることで、小野さんの頭に、ひとつの指針が生まれました。経営とは売上を上げることではない。お客の数を増やすことであるという考えです。
とりわけ、100円台、200円台という単価が多いケーキ屋にとって、単価が低い商売こそ、お客の数を増やす取り組みをしようという考えです。

エミリー_誕生日カード入れ
「お客の数が大事」と意識しだしてからの6年間に商品戦略、地域戦略、客層戦略が整いました。「何を」「どこの」「誰に」伝えるかを明確にしたことで、「どうやって」という営業のやり方も決まりました。ほかの店ではなく、いつもエミリーを利用してもらうための「リピート・紹介をいただく」方法も確立しました。
その後の4年間、毎日、小野さんは戦略を確認し、仕組みを見直し、戦術レベルと量を向上させるために勉強を続け、紙に書き、パソコンに記録し、従業員に伝えてきました。
この4年間の日々をうかがいました。
商品は変わりません。「シュークリームのエミリー」から「バースディケーキのエミリー」に変えてから、バースディケーキを中心商品として、いっそう力を注いでいます。

営業地域は少し広げました。小学校区6400世帯の占有率が十分高くなったため、徐々に、徐々にエリアを広げ、2013年末時点では1万世帯エリアにまで広げました。
客層は大きく変わりませんが、重点客層は、小学生の子供がいるお母さんから、乳幼児がいる子育てママに移りました。
そのため、「子育てママのケーキ教室」の開催を増やし、重点客層との接点回数を増やしています。

お客が増えたことで売れる商品が増え、出すハガキの枚数も増えました。戦術係の増員が必要となり、エミリーの従業員は全員で18人と増えました。
減ったものもあります。同業他社の数です。ライバル店はエリア内に4店ありましたが、1店減って3店になりました。
その結果、お客の数が増えているのです。

エミリー_ケーキ教室ポスター
お客が増える要因はひとつだけではありません。いくつもの取り組みがかけ算となって成果を生み出しています。
個々の取り組みが優れているだけではありません。すべてにおいて整合性があり、しかも量をこなしてこそ他社に差をつけることができます。

小野善秀さんは、「おかげさまで毎月50人ずつお客さま名簿が増えています。お礼状を送り続けているからだと思います」と言います。
小野さんがそう言うように、もし、どれかひとつを挙げるとすれば、お客が増えている要因は、お礼状を書き続けていることです。
そのためにお客の情報を教えてもらい、名簿化することが経営活動の中心であると教えてくれるのが、「お客が増える! No.61 ふらんす菓子屋エミリー」の事例です。



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