〈ダイジェスト〉
「お大事に」から「ありがとう」へ<鍼灸おすず治療室>
鍼灸おすず治療室は、宮崎県宮崎市のきわめてのどかな住宅街にあります。「こんなところに患者が来るだろうか…」と心配する人が確実にいると思われる場所にもかかわらず、ここ数年、お客の数が増えています。
新規客の数が多いからですが、河野哲史(かわのさとし)院長いわく、「続けさせない経営」が実現しているというのが理由です。
平成23年 431人。
平成24年 612人。
平成25年 558人。
平成26年も508人の新規客カルテをつくりました。
新規客が多いのは、紹介が多いからです。おすず治療室に満足したお客が、「あそこはいいよ」と口コミしてくれるからです。
鍼灸治療の資格をもったスタッフは、河野さんを含めて常時3人は維持したいところ。
しかし修業制を敷いているため、必ずしも3人態勢を維持できません。日によって、あるいは時期によって河野院長ひとりで施術したこともあります。受け入れる患者の数には上限があります。
また鍼灸治療は、お客一人あたり少なくとも40分から1時間はかかります。その結果、おすず治療室では、週におよそ100人、月間400人、年間5000人近くの患者を施術しています。
施術スタッフが増え、技術がさらに向上すれば、お客の数はどんどん増えると予測できる勢いです。
営業力があるからではありません。逆です。営業はしなくなりました。経営の8大戦略にあてはめると、商品戦略が優れているということになります。
ただし、特殊な技術を提供しているわけではありません。技術力は高く、その分、価格も高く設定していますが、全国どの鍼灸院でもおこなわれている鍼とお灸、マッサージをしているにすぎません。
違いをひとつあげるならば、続けさせない治療に徹しているということです。
できるかぎり一回で治す。
治療室での治療は回数を減らし、自宅でできる回復法を教える。
なるべく早くおすず治療室の“卒業生”“OB客”“OG客”になってもらう。
患者は、何らかの痛みや不自由さを感じてやってきます。2回、3回通うより1回で痛みをとりたいに決まっています。
生活上の不自由さや仕事上の支障を長期間にわたり感じるより、短期間で健康を取り戻したいに決まっています。
鍼灸治療のもっとも根底にある使命に立ち戻ったことで、お客が増えたのです。
人のからだにたずさわるところは、100パーセントといっていいほど「お大事に」と言います。河野さんも、リピートしてもらいたいと願っていたときは、お客が帰る際、「お大事に」と声をかけていました。
しかし、続けさせない治療室に変えてからは「お大事に」をやめました。ほかのサービス業と同じく、「ありがとうございます」「ありがとうございました」に変えました。
商品を明確に定め直したことで、自動的に客層も再定義されます。商品と客層の整合性が生まれたことで、新規のお客を見つける営業が不要になります。
経営の目的は何か、本当の商品は何かを考え直すきっかけを与えてくれるのが、「お客が増える!No.72 鍼灸おすず治療室」の事例です。
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