業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。


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〈ダイジェスト〉

「しかたなく導入した」3Sで利益10倍

「『3S』に取り組んで26年が経ちました。3Sを始めて数年後、売上は変わらないのに利益が10倍になりました」
 そう教えてくれるのは、株式会社タナカテックの田中稔社長です。
「継続してきたことが取り柄と言えば取り柄。決してすごい会社になったわけではありません」
 謙遜してそう言いますが、継続こそ人が目標とするものであり、会社が永続するために不可欠な活動です。

 タナカテックは、「薄板板金製缶加工」という分野で受注実績ナンバーワンの会社です。薄い板、薄板(はくばん)の板金と、缶詰の缶を製造すると書いて製缶(せいかん)加工の分野で技術、品質、納期が高く評価されています。
 情報機器メーカーや通信機器メーカー、家電メーカーの設備ラインで使われる乾燥機を作ったり、機械のカバーやダクトなど薄い金属を加工したりしています。

 ただし、同じ製品をリピートする受注は1?2割ほど。8?9割は新規受注であり試作品の受注。同じ用途でも形が違うなど、一年中、図面を見ながら少量生産しています。多品種少量短納期態勢を維持している会社です。

タナカテック工場

 地元同業界の役員を引き受けたことがきっかけで、多品種少量短納期を目指すようになった同社ですが、その実現には「整理・整頓・清掃」の「3S」を導入する必要があると教えられました。
 田中社長いわく「しかたなく導入した」3S活動ですが、数年が経ち、売上は変わらないのに経常利益が10倍に増えたことは社内外に大きな驚きと喜びをもたらせました。

 1980年代の円高不況を3Sで乗り切った同社ですが、リーマンショックはさすがに仕事が減りました。
 6000万円の赤字を生み、整理整頓しようにも手がける仕事がない状態でしたが、それならと工場の防音、防寒対策に着手し、挽回に乗り出しました。

 タナカテックには“標準の製品”はありません。メイン商品あるいは主力商品というものがない会社です。
 そのつどお客から図面をもらい、または設計から担ってお客が望む製品を作ります。つまり、機械による大量生産ができない「きめ細やかな物づくり」が商品であり、3S活動を推進することによる「短納期」が商品であり、ムダを省くことで生み出される、「お客の立場に立った提案」が商品なのです。
 その結果、リーマンショック後もまたたく間に経営を立て直し、お客の数を増やしてきました。

 売上高における依存度の高いお客を少数抱える経営ではなく、少量でもいいから多数のお客と取引する経営を貫くタナカテック。
 製造業はサービス業に学べと言われますが、逆に、サービス業は製造業から学ぶことも多いことを教えてくれる事例です。

田中稔社長(右)と田中真輝さん
「3Sは社会に役立つ人づくりをしつつ、
相手の立場に立った思考、行動の実践
を目的としています。感謝してほしくて
おこなっているわけではありませんが、
『ありがとう』と感謝されると、とてもうれ
しい」と田中稔社長(右)、田中真輝さん。

 




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