業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。

〈ダイジェスト〉

わたりがにひとすじ50年

割烹松屋
日本で唯一、わたりがに料理を専門に提供する『割烹松屋』のレポートを発表したのは2009年春でした。
それから5年。割烹松屋を率いる濱田憲司さんは、考え続けてきました。商品戦略はいまのままでいいか、客層戦略はこのままでいいか。
同業他社の取り組みを見ては、自社の戦略が間違いないことを確認していました。自社と異なる業種の事例を見ては、まねをしてきました。

経営を構成する8大要因のどれをとっても、大きく変更したことはありません。
商品は一部、値上げしました。提供する料理の量を少し減らしたものもあります。
営業地域は、今一度、泉佐野市内でなおかつ店の周辺を設定しました。

かねてよりお客は全国に広がっていましたが、できることなら地元客にも利用してもらいたい。
泉佐野で「わたりがにひとすじ50年」も営業してきた松屋です。中心客層に該当するお客は少ないだろうと予想しつつ、一件、一件、お客をさがして歩きました。

しかし、めぼしい成果を得られなかったことから泉佐野より南側、和歌山市に向けた一帯におたよりを発送。新規開拓に一定の成果を上げました。

松屋 わたりがに
客層は営業地域とセットで考える。その考え方は、やはり変わりません。店周辺の事業主開拓に挑んだあとは、和歌山方面の開業医を重点客層に設定。従来からの医者を始めとした、わたりがにに価値を感じてくれるお客が中心客層です。

店周辺の事業所開拓は直接、訪問。タクシー代にして数千円以上かかる地域は、郵送にて店の案内。これらオーソドックスな営業により、一度でも来店してくれたお客には、全従業員が協力して顧客カルテを記入しようと努力することで、ハガキを出すきっかけと書く内容の材料を収集します。

新たな取り組みとして、地元住民を対象とした「料理教室」の開催があります。一回につき最大4人のみ参加できる、本格的な料理教室ですが、客数や売上をねらっての催しではありません。
出汁(だし)の取り方や包丁の使い方など、地元で50年愛され続けてきたことの恩返しとして、住民に持てる技術を伝えているものです。

では、なぜ経営のやり方を変えないのにお客が増え続けるのか。5年前のレポートでは「1.5倍」とタイトルに込めましたが、その後の5年間でやはり客数が増え、売上も1.5倍に増えています。

松屋 新たな取り組み
取材を通して感じるのは、経営の「実行手順」がより明確になり、速くなり、効率が高まることで効果が持続して表れたからだと思われます。
願望はより強くなり、目的、目標意識がより強くなり、量をこなすことで仕組みが整い、戦術量が増えたからだと思われます。

顧客単価が上がることで、自分たちがおこなっていることがお客に支持されているという自信がつき、お客に喜ばれ、気に入られ、忘れられない対応が継続されているからだと思われます。

「お客が増える! No.5」では、できるだけ客観的なレポートに務めました。今回は、「No.5」を読んでいただいた方に向けて、という前提に立ち、できるかぎり濱田憲司さんの「独り語り」形式に紙面を割いて紹介します。




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