業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。

〈ダイジェスト〉

勝てないところは捨てる

バックス
「ネズミを100パーセント駆除するのは無理」「ゴキブリ退治は毎月一回、メンテナンスが必要」「シロアリ駆除は高額の工事費とリフォーム代金がかかる」
それが、ネズミやゴキブリの被害にあい、困っている人に共通する思いだと言われます。
そんなお客にとっての常識を破る会社が有限会社バックスです。
バックスの社長、坂田和徳(かずのり)さんは「ネズミを100パーセント駆除します!」と宣言しています。

「100パーセント駆除できるまでお金は要らない」と言い、「100パーセント駆除できなかったらお金は要らない」というほど、坂田さんは害虫や害獣の駆除、防除に自信を持っています。

坂田さんは独立前、ネズミや害虫を防除する会社に勤めていました。それ以前は金型を設計する会社に勤めていましたが、事情があり、少しでも高い給料をもらうために転職したのです。ネズミやイタチといった害獣の侵入を防ぎ、捕獲する技術が日本一と言っていいほど優れた会社でした。修業先の社長は、根っからの職人。粘り強く仕事をするだけではありません。どんな毒餌にネズミが食いつくかといった研究を怠らない人でした。
たいへんお世話になった会社ですが、14年半勤めて独立。平成13年(2001年)、一人で駆除業を始めます。
従業員を雇用せず、一人でやっていくならなんとか食べることができる…という段階を越え、一人採用し、2人目を採用し…と現在は4人で有限会社バックスを営んでいます。

名古屋市の北、西春日井郡豊山町という人口1万5000人の町で会社を起こしましたが、あえて名古屋中心部は避けて営業しています。
プロ野球選手、イチローの出身地である豊山町にも同業者はいます。坂田さんは無駄な戦いをしないで済むよう、品質を高めることで独自の商品をつくっています。
価格以外の面で価値観を共有できるお客を対象とし、ホームページに力を入れてお客を増やしています。

リーマンショック後、業績を落とし、廃業に至る同業者が続出するなか、バックスはお客を増やしてきました。
リーマンショック後こそ一時、横ばい状態になりましたが、それから4、5年続けてじわり、じわりとお客が増え、売上も増えています。
「勝てないところは捨てる。勝てるところだけ集中」。それが坂田流の経営です。
商品面で言えば、もともとネズミやゴキブリの防除に絞っていました。ところが一時期、セキュリティ関係の設備工事も始めました。
しかし、何年携わってもセキュリティ専門の会社にはかなわない。ならば捨てる、とセキュリティ関係は一切やめました。
そんな決断ができるのも、経営の勉強を重ね、これだと思った考えにもとづいて実行するからです。

競争相手がどれだけ多くても、商品は差をつけることができる。中心客層が明確であれば、地域は問わない。勉強を勉強に終わらせなければ、お客が増える。
経営の原理原則に忠実であれば、お客が増えることを教えてくれる事例です。




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