業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。

〈ダイジェスト〉

常連客を大事にするから続く
<スウィートハンズ>


スウィートハンズ
沖縄県中頭郡読谷村に、その後、数十年続いている一軒の床屋が誕生したのは1969年でした。先代夫婦の人柄と、お客想いの経営が、こつこつとお客を増やしてきました。

病気になった父親を助け、繁盛する店を手伝うため、今回の事例の主人公、上地広喜さんは『メンズヘアサロン レオン』で働き始めます。

店に立つことが少なくなった父親に代わり、上地さんはリーダーシップを発揮します。黙々とがんばる母親を助けるためにも、新しい方針にもとづき、新しい店に変えていこうと努力する毎日。

ところが従業員はついてきてくれません。誰もが、何を言っても従ってくれません。なぜなら、先代の言っていること、やっていることと違うからです。

うるま市石川店
強引でもなければ、あきらめるのが早いわけでもない上地さんは、現状を打開するために経営の勉強を始めます。

やがて、気づきます。上地さんのそれまでの経験そのものがひとつの知識、知恵、教えであり、上地さんをとりまくすべての人が先生であると理解します。

2代目はどうあるべきか。店を引き継ぐとはどういうことか。それを考え続けるようになってから状況は変わりました。

先代が他界して数年が経った現在、自分が考え、口にしていることは「先代が思い、言い続けていたことと同じ」だと言います。

一軒の床屋が、理容室2店と美容室3店に増え、さらに、美容室を卒業したスタッフによって運営するフォトスタジオまでできました。

現在のスタッフは総勢45人。オープン時は近隣にポスティングを繰り返しますが、その後は新規開拓をしなくてもお客が増える経営を持続しています。

「来てくれたお客さまを大事にする気持ちと、志、ビジョンと戦略があれば、働く人にとっても、お客さまにとっても理想的な店はできます」

そう言う上地社長にとって、「お客」とはどういう存在なのかを尋ねると、次のように話してくれました。

読谷店
「おやじが始めた店ですから、40年も45年も前から通ってくれるお客さまがいます。僕のおしめをかえてくれた人もいます。20年くらい通っている方だと、その方の息子さんも来てくれます。親子で利用してくれるだけでもうれしいのに、その息子さんが友達と一緒に来てくれる。こうなると、ヘタに営業はしないほうがいいと考えています。新規客を獲得しようと安売りキャンペーンでもしようものなら、大勢来店してくださり、お客さまをこなせないと思うんです。いままで来たことがない新規のお客さまが来店したら、常連さんに迷惑をかけるのは間違いない。いいんです。既存のお客さまと仲良くしていれば。大切なのはお金じゃなく、つながりです。その日の売上じゃなく、将来のお客さまです。うちはいますよ。髪を切らない来店客が。10代、20代のお客さまが友達を連れて店に来るんですが、カットしているあいだ、友達は待っているんですね。そういう子が何人もいます。そういう子も、うちにとっては大切なお客さまです。お金をくれる人だけがお客じゃないんです」

そう語る上地広喜社長を取材したのが、この「お客が増える!No.70」です。

上地さんに話をうかがうと、2代目のあり方を考えさせられます。先代の言ってきたこと、やってきたことを素直に引き継ぐ経営が最善であると再認識します。

お客をつくり、お客が増える経営を先代が実践してきたことが、最善であることを裏づけます。

店内
そこには経営理念そのもの、もしくは経営理念に相当するものが存在しているからです。そのうえ、お客に喜ばれ、お客が増える戦略が構築されているからです。



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