★業種は無関係。「経営のやり方」が重要です。

〈ダイジェスト〉

暗い業界の未来、明るい<西田畳店>の未来

畳という衰退期まっただ中の業種であっても、経営のやり方しだいで成長期さながらお客が増えることを教えてくれるのが、西田畳店の西田真太郎さんです。

西田畳店1

西田畳店は昭和28年(1953年)に創業。石川県金沢市の中心部から北東に7キロほど。人口は約1200人、世帯数は約500の吉原(よしはら)町で営んできました。3代目の真太郎さんが平成22年から代表を務めています。

西田畳店は後継者に恵まれ、業績は順調に推移していますが、畳業界は苦境にあえいでいます。“畳離れ”が急速に進んでいると言われています。

平成24年の畳表生産量は1490万枚。平成5年の4500万枚と比べると、20年間で3000万枚、率にして66パーセントも減少しました(産経WEST2014年5月17日の記事より)。

需要が減る以上、畳の原料である「い草」も生産減少を余儀なくされます。い草の主産地は福岡県と熊本県ですが、両県のい草作付け面積は、平成16年から平成25年までの10年間で1800ヘクタールから800ヘクタールへと半分以下に減少(農林水産省の統計)。さらに、現在、畳表の8割は中国など外国から輸入している状況です。

西田畳店1

住宅の着工戸数も今後、伸びる可能性は低いと言われています。リーマンショックの影響により大きく落ち込んだ2009年以降、消費税前の駆け込み需要などで少しは増えていた新設住宅ですが、2014年は前年比9パーセント減という結果に終わりました。
2015年は90万を超える着工戸数ですが、2025年以降は60万戸台にまで減少するとは予測されています(野村総合研究所)。

新しくつくられるマンションでは畳のない部屋が増えています。足腰の衰えに応じて椅子の生活に変える人が増えたことから、畳をフローリング材にリフォームする人も増えています。高齢者に限らず、和室をリフォームし、和室を洋室に変える人が増えています。

畳店にとって、もはや新築住宅用の畳を敷くことに大きな期待はできません。畳の生活を大切に思い、畳の表替えをするお客と一件、一件、長い付き合いを続けることが生き残りの方法であると、西田真太郎さんは思いを新たにします。

真太郎さんは経営の勉強を始めてから、「何かで1位になる」ことを決めました。襖や障子をはじめ内装全般ができるけれど、「畳で1位になる」と決めました。

西田畳店1

営業地域も見直しました。遠方のお客から仕事を依頼されると、西田畳店の評判が遠くまで広まっていると思っていましたが、見方を変えました。これまでのお客は会社の近くに多数存在していることがわかり、会社近辺エリアであれば市場占有率を上げることは決して難しくはないとわかったからです。

客層も思い切って変えました。ハウスメーカーなど法人受注のウエイトを下げ、個人客から直接受注するウエイトを高めました。
過去に受注したお客との接点を深めるため、定期ハガキを出しはじめました。新規客を追うこと以上に、既存客とのつながりを重視した“売り込まないニュースレター”も発刊しました。

真太郎さんによる経営は原則に忠実、淡々と進められました。その結果、既存客からのリピート受注が増え、新規客が増え、売上は1.5倍、粗利益率も2パーセント上昇したのです。

衰退期に入った商品は衰退の一途をたどるとは限りません。会社のあり方、経営のやり方しだいでお客が増えることを証明してくれるのが、「お客が増える! No.71 西田畳店」の事例です。

 

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